毎日歯磨きをしているのに虫歯になったり、歯茎の腫れが気になったりしませんか?実は、歯ブラシだけでは歯垢(プラーク)の約61%しか除去できていないのです。残りの約39%の汚れを効果的に除去するために重要なのが、フロス(デンタルフロス)と歯間ブラシといった歯間清掃具です。しかし、「どちらを使えばいいの?」「違いがよくわからない」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。本記事では、歯科専門家の見解に基づいて、フロスと歯間ブラシの違いと正しい使い分け方法を詳しく解説いたします。
フロスと歯間ブラシの基本的な違いと特徴
フロス(デンタルフロス)の特徴と適用部位
フロスは細い糸状の清掃器具で、歯と歯が密着している狭い隙間の清掃に特に優れています。歯と歯の接触面(コンタクトポイント)から歯茎の境目まで、歯の側面全体を効果的に清掃することができます。フロスは糸の形状であるため、ほとんどすべての人の歯間に挿入することが可能で、歯並びが良い方や歯間が狭い方には欠かせないアイテムです。
フロスには大きく分けて2つのタイプがあります。ロールタイプ(糸巻きタイプ)は自由に長さを調整でき、指に巻き付けて使用します。慣れが必要ですが、どの部位でも自由に操作できる利点があります。一方、ホルダータイプ(持ち手付き)はプラスチックの持ち手にフロスが取り付けられており、初心者でも扱いやすいという特徴があります。
歯間ブラシの特徴と適用部位
歯間ブラシは、ワイヤーに細いナイロン毛が取り付けられた小さなブラシで、歯と歯の隙間が比較的広い部分の清掃に適しています。特に、歯茎に近い三角形の隙間(三角スポット)の清掃に効果的です。年齢を重ねると歯茎が下がったり、歯周病の影響で歯間が広がったりする傾向にあるため、中高年の方や歯間が開いている方に特に推奨されています。
歯間ブラシにはサイズが豊富に用意されており、通常SSSS(4S)からLLまでの7サイズ展開となっています。最小のSSSS(0)サイズは通過径が約0.6mmと非常に細く、今まで歯間ブラシが入らなかった狭い歯間部にも使用できるようになっています。適切なサイズ選びが重要で、歯間に無理なく挿入でき、使用時にきつく感じない程度のサイズを選ぶことが大切です。
使い分けの基本原則と併用のメリット
歯間の状態に応じた使い分け方法
フロスと歯間ブラシの使い分けは、主に歯間の広さによって決まります。歯間が狭く、歯と歯が密着している部分にはフロスが最適です。一方、歯間に一定の隙間がある部分、特に歯茎に近い三角スポットには歯間ブラシが効果的です。
- フロス適用部位:歯と歯の接触面、前歯などの狭い歯間、歯並びが良い部分
- 歯間ブラシ適用部位:歯茎が下がった部分、すきっ歯の方、奥歯の根元部分、ブリッジ(被せ物)の下部分
歯科医師会の調査によると、フロスを併用することで歯垢除去率が79%に、さらに歯間ブラシも加えることで85%まで向上することが確認されています。この数値からも、両方を使い分けることの重要性がわかります。
併用することの医学的メリット
結論から言うと、フロスと歯間ブラシは両方とも使用することが歯科専門家によって推奨されています。それぞれ異なる特性を持ち、お互いの欠点を補い合う関係にあるためです。フロスは狭い隙間の清掃に優れていますが、広い隙間の清掃には向いていません。逆に歯間ブラシは広い隙間には効果的ですが、狭い隙間には挿入できません。
毎食後の使用が理想的ですが、時間的制約がある場合は、最低でも就寝前には両方を使用することが推奨されます。就寝中は唾液の分泌が減少し、細菌が増殖しやすい環境になるため、寝る前の徹底的な清掃が虫歯や歯周病の予防に重要な役割を果たします。
正しい選び方と使用方法のポイント
フロスの種類選びと使用テクニック
フロスを選ぶ際は、ワックスの有無も重要なポイントです。ワックス付きフロスは蜜蝋(ビーズワックス)でコーティングされており、歯間にスムーズに挿入できるため、初心者や歯間が狭い方に適しています。一方、ワックスなし(アンワックス)フロスは摩擦力が高く、歯垢の除去効果がより高いとされていますが、慣れが必要です。
素材についても選択肢があります。ナイロン製は丈夫で摩擦力が高く汚れをしっかり除去できますが、やや硬めです。ポリエステル製は柔らかく歯茎への負担が少なく、ポリエチレン製は強度が高く細いため狭い歯間に適しています。自分の歯茎の状態や感受性に合わせて選ぶことが大切です。
使用時は、40〜50cm程度の長さに切り、両手の中指に巻き付け、親指と人差し指で1.5cm程度の間隔を保ちながら操作します。歯間にゆっくりと挿入し、前後だけでなく上下にも動かし、隣り合う歯の両方の面を清掃することがポイントです。力を入れすぎると歯茎を傷つける可能性があるため、優しい力で行いましょう。
歯間ブラシのサイズ選びと安全な使用法
歯間ブラシで最も重要なのは適切なサイズ選びです。初めて使用する方は、最も細いSSSSサイズから試すことをお勧めします。サイズが大きすぎると歯茎や歯根を傷つけてしまい、歯肉退縮の原因となる可能性があります。逆に小さすぎると歯垢を十分に除去できません。
歯間ブラシが入らない場合は、無理に挿入せずフロスを使用しましょう。適切なサイズは、歯間に抵抗なく挿入でき、使用時にきつく感じない程度のものです。不安な場合は歯科医院で相談し、自分に合ったサイズを選んでもらうことも有効な方法です。
使用方法は、歯間ブラシを歯間に対して斜め下から(下の歯の場合)、斜め上から(上の歯の場合)ゆっくりと挿入し、歯間に沿わせて前後に2〜3回動かします。歯の外側と内側の両方から行うことで、より効果的に歯垢を除去できます。使用後は流水でブラシ部分をよく洗い、乾燥させて保管しましょう。
年齢・口腔状態別の推奨使用パターン
若年層から中年層への推奨事項
健康な歯茎で歯並びが良い20〜40代の方は、基本的にはフロスを中心とした歯間清掃が適しています。この年代では歯間が比較的狭いことが多く、フロスで十分な清掃効果が期待できます。ただし、部分的に歯間が開いている箇所がある場合は、その部分にのみ歯間ブラシを併用することが推奨されます。
特に、矯正治療中の方や被せ物(ブリッジ)がある方は、器具周辺の清掃により注意が必要です。この場合、フロスと歯間ブラシの両方を使い分けることで、より効果的な口腔清掃が可能になります。
中高年層・歯周病リスクが高い方への特別な配慮
50代以降や歯周病の既往がある方は、歯茎の退縮により歯間が広がりやすくなるため、歯間ブラシの使用がより重要になります。しかし、同時にフロスも併用することで、歯間ブラシでは届かない細かい部分の清掃も確実に行えます。
歯周病治療中の方は、治療の進行とともに歯茎の状態が変化するため、歯間ブラシのサイズ変更が必要になることがあります。一週間程度でサイズ変更が必要になることもあるため、治療中は少量ずつ購入することをお勧めします。
介護が必要な高齢者の場合は、介助者による口腔清掃が重要です。誤嚥性肺炎などのリスクを避けるため、歯科医師や訪問歯科衛生士のアドバイスを受けながら、適切なケアを実施することが求められます。
よくある使用上の注意点と対処法
出血や痛みが生じた場合の対応
歯間清掃具を使い始めた際に軽度の出血が生じることは、必ずしも異常ではありません。これは歯茎の炎症部分から悪い血液が排出されることによるもので、継続的に正しく使用することで次第に出血は減少していきます。ただし、2週間以上出血が続く場合や激しい痛みがある場合は、使用方法に問題があるか、歯茎の状態に異常がある可能性があるため、歯科医師に相談しましょう。
出血を最小限に抑えるためには、力を入れすぎないことが重要です。特に歯間ブラシは、適切なサイズを選び、優しい力で動かすことで、歯茎を傷つけることなく効果的な清掃が可能になります。
器具の交換時期と衛生管理
フロスは基本的に使い捨てです。一度使用したら新しい部分を使用するか、ホルダータイプの場合は交換しましょう。歯間ブラシは洗浄して数回使用できますが、ブラシの毛先が摩耗したり曲がったりした場合は早めに交換が必要です。一般的には週に1回程度の交換が目安とされています。
使用後は必ず流水でよく洗い、風通しの良い場所で乾燥させることで、細菌の繁殖を防ぐことができます。衛生的な管理を心がけることで、より安全で効果的な口腔ケアが実現できます。効果には個人差があり、口腔内の状態や使用方法によって結果は異なることをご理解ください。
まとめ
フロスと歯間ブラシは、それぞれ異なる特性を持つ歯間清掃具であり、理想的には両方を使い分けることが推奨されます。歯間が狭い部分にはフロスを、広い部分には歯間ブラシを使用することで、歯ブラシだけでは除去できない約39%の歯垢を効果的に除去できます。毎日の継続的な使用により、虫歯や歯周病のリスクを大幅に減少させることが可能です。自分の口腔状態に最適な器具やサイズがわからない場合は、歯科医院で専門家に相談し、正しい使用方法の指導を受けることをお勧めします。健康な口腔環境を維持するために、今日から歯間清掃具を日常のオーラルケアに取り入れてみてください。
参考サイト
お口と歯の健康最前線 使いこなせてますか?「歯間清掃具」|日本歯科医師会
歯間ブラシとデンタルフロスどっちがいい?種類や違い、選び方を解説 | Lidea by LION
製品の使い方_デンタルフロス/歯間ブラシの使い方|サンスター製品情報サイト
【歯科衛生士さんに聞いた】フロスや歯間ブラシの選び方|小林製薬の歯間ケアシリーズ
歯間ブラシとフロスどっちを使うべき?上手な使い方を解説します | アエラスバイオコラムサイト